いろんな種類の「センサー」 どう英訳する?

機械翻訳エンジンを開発している弊社では、数々の分野の対訳データを収集しています。

最近は、人工知能(AI)系であるニューラルネットワーク翻訳エンジンが主流になってきていて、大量の対訳データを学習させることにより翻訳エンジンを開発し、翻訳精度を上げることが可能になります。

 

観光分野の翻訳精度を上げるためには観光分野の対訳データ、法律分野の翻訳精度を上げるためには法律分野の対訳データというように強化したい分野のデータを数多く学習させるために、日々対訳データの収集とクリーニング作業を行っています。

 

今回は、これまでに収集した技術分野の対訳データの中で気になった「センサー」について、国立研究開発法人産業技術総合研究所のサイトに掲載されていた日本語とその英訳を皆さんにご紹介します。

 

URL:https://www.aist.go.jp/aist_j/highlights/2017/vol3/index.html

日本語:音響センサーと測域センサーにより、打音の波形と、打撃の位置情報を合わせて取得し、異音解析技術により異常の有無を自動的に判定する。 

 

URL:https://www.aist.go.jp/aist_e/list/highlights/2017/vol3/index.html

英語:A hitting sound waveform and hitting position information are simultaneously acquired using an acoustic sensor and a range scanner, and the presence or absence of an anomaly is automatically determined by an anomaly sound detection technology.

 

 ここで注目したのは、「音響センサーと測域センサー」という日本語に対して「an acoustic sensor and a range scanner」という英訳が付けられている点です。

 

音響センサー acoustic sensor

測域センサー range scanner

 

「センサー」をすべて無条件に「sensor」とせずに「scanner」と区別して訳しているあたり、なかなか面白い感じですね。

 

そこで、大手電機メーカーの研究所で所長を経験した工学博士で、現在は弊社英語翻訳チームの責任者を務める社員に意見を聞いてみました。

 

その結果はこちら。

「sensor」という言葉はもともと「sense(感知)するもの」を意味し、物理的・化学的な現象を電気信号などに変換するデバイスを指しますので、音響センサーは正に「sensor」であると言えます。一方、測域センサーは広義には「sensor」ですが、単にsenseするだけではなく

レーザーで走査(scan)する働きも持っていますので、Laser range scanner、あるいは簡単に Range scanner と呼んでいます。しかし、広義には「sensor」ですので、Laser range sensor とも呼ばれています。

 

との回答を得ました。

 

さらに、「推測になりますが」という但し書き付きで、音響センサーと測域センサーについて解説がありました。

 

・音響センサーについて

 一般のマイクロフォン同様に、構造物の打音を感知(センシング)し、電気信号に変換するセンサーと思われます。このセンサーは受動的に信号(音)を感知するだけで、能動的な役割はありません。

 

・測域センサーについて

 恐らく、構造物をレーザーで走査(スキャン)し、その反射光からハンマーでたたいている位置を検知しているものと思われます。原理的には、自動運転車やお掃除ロボットに搭載されているレーザレーダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)と同様と思われます。ちなみに、これを小型にしたものが iPhone12 Pro にも搭載されています。このセンサーは、音響センサーとは異なり「能動的に」レーザーを照射し、戻ってきた信号を感知する、両方の働きをしています。例えるなら、CDやDVDの光ピックアップのように「レーザー光を照射し、反射信号を検知する」役割を持っています。

 

ということだそうです。

ひと口に「センサー」と言っても、検知する対象が何なのかやその機能によってその役割はセンサ万別。。

おっと、技術的な内容を真面目に書こうと思っていたのに、ここでまさかおやじギャグを挟んでくるとは。。。

 

これからも弊社が収集した対訳データの中から気になった対訳をピックアップしてご紹介していきますので、乞うご期待!