インバウンド翻訳や多言語音声合成ナレーションで注意すべき、日本の地名

インバウンドの翻訳で気を付けることとして、何があると思いますか?

その前に、「インバウンド」という表現のおさらいをしておきましょう。
簡単に言うと、「外国人が日本に訪問する旅行のこと」という意味で用いられることが多いようです。訪日外国人観光客向けの出版物やWebサイトを翻訳することが多い弊社が気を付ける点としては、地名等の固有名詞の誤訳を避けることはもちろんのこと、それらの読み方にもとても注意が必要なのです。

例えば、「新城」と言う地名、みなさまはどのように読みますか?
「しんじょう」と発音すると青森県、神奈川県の地名、
「しんしろ」 だと愛知県の地名、
「あらぐすく」 だと沖縄の地名になります。
同じ漢字でも、地域によってずいぶんと読み方が変わってきますね。

当社では、日本語原文に住所や地名が含まれる場合、しっかりとリサーチをしたうえで翻訳の専門家が正しい訳を付けていきます。あらかじめ読みが振られていれば楽かもしれませんが、そのようなケースは極めてまれなのです。

ソフトウェアによる音声合成のナレーションをする場合も同様で、地名が含まれる場合には細心の注意が必要です。音声合成ソフトウェアの辞書に1種類の読み方は登録されていることが多い反面、地域ごとに異なる読み方までは網羅されておりません。その場合は、原文の内容に基づいてお客様のご希望の読みになるように人の手によるチューニング作業が必要になります。

日本語だけでも上記のように複数のパターンがあるくらいですから、ましてやそれを多言語で正しく表記して読み上げるとなると、その国の言語のネイティブライターの出番です。

例えば、渋谷を翻訳すると、英語では「Shibuya」、韓国語では「시부야」、中国語では「涩谷」となります。これを音声合成で読み上げると、英語と韓国語の読みはいずれも「シブヤ」となりますが、一見、もっとも「シブヤ」と読みそうな中国語が実は読みが異なり、「スーゴゥ」となります。漢字圏であり、日本に比較してアルファベットを多用しない中国だけに、地名の表記と発音までをも中国語で、という文化的な背景を考慮した調整が必要なのです。

当社では各言語に精通したスタッフが実際に耳で聞いて、 正しい読み方、さらには正しいイントネーションになっているかを確認する多言語音声合成のチェックサービスも行っているため、社内はちょっとした多国籍企業の様相を呈しているのです。

このように、多言語の音声チューニングを行うためには、ネイティブならではの知見が必須だと言えるでしょう。

最近は、鉄道会社からお仕事の依頼を受けることも増えているため、ときどき駅構内やホームで、「あっ、あのときの音声合成?」と感じさせられることがあります。そんな瞬間って、この仕事をやってて嬉しく思えるひとコマなのです。
さぁ、次はどこで自分が担当した仕事に出会えるか、楽しみです。