【コラム】中国特許調査・翻訳動向

第5回:日本サーバー版CNIPR

 中国特許調査ツールとして最も信頼性が高いと言われているCNIPR(China Intellectual Property Right Net)の日本サーバー版が2014年春にリリースされ、日本でも中国特許調査が行いやすくなった。本コラムの第3回で紹介したように、中国サーバー版CNIPRとの違いは、日本にサーバーがあることで、「1回でダウンロードできる件数が大幅に多い」、「検索スピードが速い」、「安定したサービスが提供できる」といった利点があり、使い勝手が向上している。6月のバージョンアップで更に機能が充実する。

 日本サーバー版CNIPRには、1985年9月以降の特許(公開、登録)、実用新案および意匠が収録されており、SIPO(State Intellectual Property Office)で公開される公報情報がほぼ同時に3次データとして検索が可能である。1次と2次データは中国特許の公報をOCR(Optical Character Recognition)で読み取ったものをある程度修正したデータであり、3次データはIPPH(Intellectual Property Publishing House Co., Ltd.)のOCRセンターで2次データの文字化け等を手作業で修正したものである。

 日本サーバー版CNIPRがもついくつかの特徴的な機能を以下に記す。

① ステータスの絞込み検索
 SIPOの法律状態の表記法はさまざまあり、記載ミスも存在する。これまでは中国特許の法律状態を原語で検索できるデータベースがなかったが、日本サーバー版CNIPRでは、特許の生死を絞込むだけでなく、詳細の経過情報でも絞込みもできる。

② 演算機能
 検索式作成ノウハウの重要性について本コラムの第3回で記載したが、日本サーバー版CNIPRでは、検索履歴の演算、履歴の削除、再検索などができるため、検索式のノウハウの蓄積に便利である。

③ ハイライト機能
 ユーザー設定により、必要なキーワードをハイライト表示することができる。

④ ダウンロード機能
 最大10,000件のリストダウンロードや公報のPDFダウンロードが可能である。

 今後も機能のアップグレードを予定しており、現在アップグレード予定の機能は以下である。

① ダウンロード項目の選択ができる
 目的に合わせて必要な情報だけをダウンロードすることが可能になる。

② 審判情報検索
 詳細の審判情報の検索・閲覧が可能になる。

③ バージョンアップした出願人辞書(10月にアップグレード予定)
 より精度の高い出願人辞書を搭載する。

 これまでは、中国特許についてはそもそも戦略自体も策定されていない企業が多いと思われるが、中国特許調査がより便利になったことで、中国特許についての戦略を策定するというアクションにつながり、策定した戦略が着実に実行されることを期待したい。

執筆者: 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授 岩本 隆

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