実施日:平成21年11月10日、11月12日
「J-SERVER」、「WorldVoice 日中英韓」を活用した実験授業。
その学習効果は?

早稲田大学 政治経済学部では、砂岡和子教授の指導のもと、株式会社高電社が提供する自動翻訳サービス「J-SERVER」を利用した中国語の授業を実施している。 [写真1]
「J-SERVER」は9言語のオンライン自動翻訳サービスを含むビジネス・学習用ソリューションで、政治経済学部では、このうち、中国語と韓国語の自動翻訳サイトをインターネット経由で利用している。平成16年4月に導入後、今年度で6年目を迎える。
今回は、この自動翻訳サービスに加えて、音声読み上げソフトウェア「WorldVoice 日中英韓」を活用した中国語の実験授業を2回実施した。授業を受けたのは初級レベルの1年生と中級レベルの2年生のクラスの学生各25名で、日頃から「J-SERVER」の日中テキスト翻訳や、中日Web翻訳などの機能を活用している学生である。今回、初めて、テキスト読み上げソフトウェア「WorldVoice 日中英韓」を導入し、自分で作成した文章を発音したい時、補助ツールとして、本ソフトウェアにどのくらい学習効果があるのか、確認実験を行った。

写真1

今回の2回の授業では、各々、下記のような課題が学生に与えられた。

・初級レベル1年生の課題:
教科書の中国語手紙文と文法項目を参照し、早稲田祭に参加した感想について、80文字以上の中国語電子メールを書き、それを音声読み上げソフトウェアを使って繰り返し聞いた後、自分で発音した音声を録音しなさい。
・中級レベル2年生の課題:
指定された中国インターネット上の最新キャンパスライフに関する記事を閲読した後、質問2題に中国語で答えなさい。さらに、早稲田大学入学後の自分の生活と体験について、中国語100文字以内で作文した後、自分で発音して録音しなさい。
[写真2]
写真2
「学生にも好評で、予習復習も意欲的になったのには驚きました。」

両クラスとも、中国語の自由作文をいったん「J-SERVER」で再度日本語に逆変換し、訳文が不自然な中国語を自己修正するよう条件をつけた。学生たちは一斉に課題に取り組みだした [写真3]。
中国語インターネットの記事は分量が多いため、読解は隣近所同士での分担作業を許可している。そのため、コンピュータ利用の語学授業にありがちな静寂な授業風景とは異なり、学生同士の賑やかな会話が聞こえてくる。学生が作業に集中する間、砂岡教授は学生の間を巡回し、機械だけではわからない疑問や質問に答えて回った [写真4]。
写真3 写真4

砂岡教授は、「インターネットを使えばリアルタイムの現地情報に触れることができ、学習意欲を高めるのに効果がありますが、初中級レベルの語学力では歯が立ちません。「J-SERVER」を利用することによって、言語間の壁を低くし、初習語学レベルでも生きた情報を取得し、テキスト文の背景理解を深めることが可能です。「J-SERVER」は翻訳精度も高く、電子辞書に未登録の流行語や最新用語にも対応しており、なにより使い勝手が格段に良いため、学生にも好評で、予習復習も意欲的になったのには驚きました。」とその学習効果を評価している。

「本当に機械で合成された音なのですか?」  「今日の授業はとても楽しかった!」

音声読み上げソフトウェア「WorldVoice 日中英韓」は、中国語などで記述されたテキストやホームページ上のテキストデータをネイティブレベルの自然な音声で読み上げるソフトウェアである。学生は自分自身が作成した中国語の文章が即座に流暢な中国語音声で再生されるので、興味深く何度も繰り返し聞いて確認をおこなっていた。音質の良さに驚いている学生が多く、「今まで聞いたことのある機械の合成音とは全然違う。本当に機械で合成された音なのですか?」、「今日の授業はとても楽しかった!」という感想が聞かれた。

次に、学生はWindowsに標準添付されている「サウンドレコーダ」を使い、完成させた中国語の文章を自分の声で録音した [写真5]。
「J-SERVER」には中国語漢字テキストを数字付きピンインに変換する機能があるため、初級レベルの学生には、自身で変換したピンインを見ながら録音するなど、意欲的な学生も見られた [写真6]。
写真5 写真6

保存した肉声音声ファイルは作文テキストとともに先生に提出し、中国人留学生によって聴解度評価を行った。結果は、「WorldVoice 日中英韓」による中国語読み上げ音はいずれも80〜90点の高得点だったのに対し、学生の肉声録音の評価は、初級1年生が60点前後、中級2年生が約70点だった。

砂岡教授は、「音声読み上げソフトウェアは、あらかじめ与えられた発音情報を、いつでもどこでも、正確に繰り返し再生してくれます。「WorldVoice 日中英韓」は、ネイティブの自然な音声データベースに基づいて、発音要素を上手に繋いで合成しますから、中国人が聴いて流暢と感じるのは当然です。学生たちの発音より「WorldVoice 日中英韓」の読み上げ音のほうが評価が高かったのは教員としては口惜しいですが、初中級レベルの学習者が上手に利用すれば、人間の知識や記憶力の不足を補うツールとして利用価値が高いことを検証できたと思います。」と、今回の実験授業の成果を語った。今回は時間の関係上、試すことはできなかったが、「WorldVoice 日中英韓」の再生スピード選択機能を使えば、聞きとりにくい個所をゆっくり何度も再生して、随意なテキスト文のリスニング学習に役立てることもできる。

「機械と分担して練習量を確保し、教員との対話の時間を大切にしたい。」

「J-SERVER」や「WorldVoice 日中英韓」など、外国語授業への学習支援ソフトウェアについて、砂岡教授は、「教員一人では対応不可能な個別課題作成や繰り返し学習を、機械と分担して練習量を確保し、学生の基礎学力を高め、教員との対話の時間を大切にしたい。」と、導入の目的を語った。検証実験と学生アンケートの詳細は別途公開予定である。